
今回のご依頼はオリジナルの不動明王像になります。
不動明王の意味や歴史も含め工程順に紹介していこうと思います。最後までご覧ください。
不動明王の歴史
平安時代初期、弘法大師 空海によって唐から伝えられた密教。
その中で五大明王の中心として不動明王が信仰されるようになりました。有名な像に東寺の不動明王像などがあります。
今も多くの方から信仰されています。
お寺様から個人様まで幅広いご依頼があります。


木材に図案を描いていきます。
不動明王の顔は一般的なお顔です。説明しますと。
・目は天地眼(てんちがん)
右目は天を向き、左目は地を向く眼
左目で災いを退け、開いた右目で善を保ちます。
・牙は牙上下出 (がじょうげしゅつ)
右の牙を上向きに、左の牙を下向きに出している。
これは何故かというと
右の牙は上方を向き「上求菩提(じょうぐぼだい)」
「上求」は、さらに上の境地を求めることを、「菩提」は煩悩を捨てた悟りの境地を意味します。
左の牙は下方を向き「下化衆生(げけしゅじょう)」
衆生を教化して救済を意味します。
この点を抑え彫り出します。

叩きのみで荒彫りをし形を出していきます。
本職の場合は出来るだけ形を叩きのみで出していけるかが大事になります。
荒彫りの様子は後ほど動画で載せますのでご覧下さい。


岩坐も彫ります。不動明王の台座は主に2種類、岩坐と瑟瑟坐(しつしつざ)。
今回は岩坐を彫ります。この岩は盤石をイメージし動じない精神を体現化しています。なるべく、荒々しいタッチで仕上げていきます。
さらに詳しく知りたい方は、まとめてありますのでご覧下さい。

火炎光背
この火炎は迦楼羅炎(カルラエン)と言います。
迦楼羅王という仏像が吹いている炎になります。迦楼羅王の顔は鳥の顔をしていることから光背には鳥のクチバシが彫り込まれます。
完成品を見てご確認下さい。

次は剣と縄(羂索)
縄は木彫りだと強度がないので五色縄を使用しました。
左手に持っている縄は、
煩悩や厄災に惑わされ悪い方向へ向かいそうな時、その身を縛り上げても、正しい道へと導く役割。
右手の剣は煩悩や厄災を断ち切ります。

以上の点を踏まえて彫り出していきました。
先ほど説明したように光背の左上や鳥のクチバシがついています。

完成
お客様と図案から相談させていただき、台座、光背、本体、全てオリジナルの不動明王像となりました。
こだわりをお持ちのご依頼をいただくだけあり、実際に会うと、大変丁寧な心の持ち主の方でした。喜んでいただけて、職人冥利に尽きます。ご縁をありがとうございました。
工程動画はこちらになります。よろしければご覧下さい。
誰かにとって特別であればそれでいい。そんな仏様を迎えることをコンセプトに当工房はお仕事をしています。
不動明王像の注文相談の方は気軽に相談してください。
工房 仏師 坂上俊陽
076-207-4672
工房見学は事前にご連絡ください。
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