能登半島地震により、多くの文化財が被害を受けました。日本の歴史と精神を象徴する仏像も例外ではなく、強い揺れによって破損したものが数多く確認されています。
私は国の文化財レスキュー活動の一環として、これらの仏像の応急処置を実施しています。
被災地の寺院や施設へ赴き、一体一体の状態を確認しながら、可能な限り早急な修復対応を行いました。
今回は石川県羽咋市のお寺様です。写真の許可はいただいています。
過去に何度か活動報告はしています。今回は接着について説明します。
過去の活動はこちら
・接着について
膠(にかわ)を使用
膠は寒すぎると直ぐに寒天のようになり暑いと接着力が落ち、腐りやすくなったりします。気温や湿度によって膠の状態が変化するため、その日の環境に合わせた調整が欠かせません。
その日の気温で膠の馴染み具合をみる。毎回違うので、最適を見つけ調整する。
寒い日は、膠を適切に保温することで作業性を確保し、暑い日は乾燥速度を見極めながら、必要に応じて濃度を調整することで、理想的な接着状態に仕上げることができます。
実際には外での作業もあり理想的な状態で接着が出来ることはほとんどありません。
地震によって破損した仏像。接着したい部分に塗っていきます。塗る量も気温に応じて調整していきます。
光背、台座、手足の破損が目立ちます
この活動を通じて改めて実感したのは仏像が持つ精神的な価値と、それを守り伝える責任です。
仏像は祈りと歴史を宿した存在。被災した方々にとっても、その姿が保たれることで安心感が生まれると感じました。
今後も、より専門的な応急処置活動が必要となりますが、一つひとつを未来へ残せるよう、取り組みを続けていきます。
「文化を守ることは、思いを守ること。」
この思いを胸に活動を続けていきます。
復興には時間が必要
能登半島では、地震による被害が広範囲に及び、文化財の修復にはまだまだ時間がかかります。しかし、文化を守ることは、人々の心を守るという思いのもと、一つひとつの仏像を未来へつなげるための活動を続けていきます。
こうした活動が長期的に出来るのは多くの方々の温かい支援と協力があってこそ。皆様の力添えに心から感謝申し上げます。
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